『ワタシとまめゴマ日記』
この本は今、巷ではやってるのかな。同僚のシガさんが、強いお薦めとともに貸してくれた。
架空の動物「まめゴマ」と、ひょんなことからそれを飼うことになった主人公のお話。「ペットを飼う楽しみ」が巧みに描写されていると思った。
猫でも犬でも、あるいは金魚でも昆虫でもアザラシでも(笑)、生き物を飼育するのは楽しい。餌を与え、棲み家を整え、定期的に手入れをしてやる。そのつど、反応をしげしげと観察する。もの云わぬ相手とのコミュニケーション。植物よりは手がかかり、人間の子どもよりはずっと楽。
Posted by mik at 08:22 PM
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『黄色い目の魚』
おすすめ本のご紹介。
主人公は高校生の少年と少女。真っすぐで実直で不器用で、それでいてちょっと屈折したふたりの目を通じて描かれる心象風景が、おそらく同世代の読者にとっては強いシンパシーを、私の世代にとっては10代への郷愁をさそう。
「今のままじゃだめなんだ!」と自分に対してダメ出しを繰り返す(卑下とは違う)主人公。変わりたい気持ち、変われないもどかしさ、自己嫌悪、自分が持たざるものを持つ相手への憧憬。………
10代の頃の生き方って、たしかにこんな感じだったな。たとえるなら、ものすごく下手くそな車の運転みたいな感じ。車体感覚がつかめなくて、あちこちぶつけたりこすったりして傷いっぱいつけながら、でも痛いのにすら気づかなくて、ただ必死に前を見据えて力いっぱいアクセル踏み続けるみたいな。
そんな、愚直なまでの誠実な生き方。大人には決してできない。
物語の舞台は湘南鎌倉。海辺の情景もまた、ノスタルジックで切ない。
* * * * *
久しぶりに猫以外のトピックで書いてみました。なんだか「FinderViews番外編」みたいな感じがするな。
佐藤多佳子『黄色い目の魚』
海辺の高校で、同級生として二人は出会う。周囲と溶け合わずイラストレーターの叔父だけに心を許している村田みのり。絵を描くのが好きな木島悟は、美術の授業でデッサンして以来、気がつくとみのりの表情を追っている。友情でもなく恋愛でもない、名づけようのない強く真直ぐな想いが、二人の間に生まれて──。
Posted by mik at 02:07 PM
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連載小説がおもしろいんだってば
私が購読している読売新聞の夕刊で、数日前から角田光代の連載小説が始まって、朝刊の池澤夏樹、小川洋子とあわせて、今、私の好きな作家がそろいぶみ。1話たりとも読み逃すまいと思って(後で単行本を買い直すのも悔しいし)、毎日、小説のページから新聞を読み始める私。
新聞の活字って、小説に瀟酒な印象を与える気がするのは私だけだろうか。本の装丁家は、小説の単行本を作るとき、物語の作風に応じて活字を選択するそうだけど。
Posted by mik at 11:59 AM
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空中庭園 / 西日の町
オススメの本2冊。
【空中庭園】角田光代
映画原作。地方都市の分譲住宅で暮らす、いっけん円満で幸福そうな一家族。そのひとりひとりの込み入った立場と心情を、巧みに描き出す群像劇。家庭という劇場で演じられる、家族という滑稽な芝居の様相。
【西日の町】湯本香樹実
主人公の少年が母親と暮らす小さなアパートに、ある日突然、祖父が転がり込んでくる。老いさらばえ、座敷童のように部屋の隅にうずくまり、貝のようにむっつりと押し黙る祖父は、たいへんな奇人そしてやっかい者だったが、時折垣間見せるその奔放な生き様、豪傑ぶりに、少年は淡い憧憬を抱いていく。
物語の舞台は昭和40年代、北九州の小都市。昭和の生活臭のする、ノスタルジックな世界観が胸にじんとくる(私はその時代を知らないけれど)。
Posted by mik at 01:20 AM
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きょうの猫村さん1
話題の猫まんがをもう1冊。ひゃー、おもしろいわーこれ。なんか、絵のちょっとうまい一中学生とかが授業中にふざけて描いたまんがみたいな(クラスメートの間で大人気)、力の抜けた画風。バカバカしいけど、妙に奥行きのあるストーリー展開。続きが気になる。
Posted by mik at 10:15 PM
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かわいいものは苦手
近ごろ巷で話題の猫まんがを、同僚から借りて読む機会を得る。楽し。
主人公の子猫・チーちゃんがかわいすぎて、私の苦手なタイプ。そう、私はかわいいものが苦手。
幼くて小さい、非力な生き物。イノセンスのカタマリのような存在。見ているだけではらはらする。そして、守ってやりたくてどうしようもなくなる。こんなのがそばにいたら、とても心穏やかではいられない。
うちの猫たちを拾ったときのことを思い出す。それまでずっと猫を飼いたいと思っていたはずなのに、いざ子猫を目の前にしたら、私は怖じ気付いてしまった。自分で飼えばいいのに、それをためらった。子猫たちがあまりにかわいくて、自分のそばに置いておくのがこわかった。守ってやりたいと思いながら、自分がそれを傷つけたりこわしたりしてしまうのではないかと。
逡巡の果てに、結局私は拾った猫を自分で飼うことに決めて、それで今日に至るわけだけれど、このかわいい人たち(猫)を見ていると、正直、今でもときどき落ちつかない気分になる。守ってやれてる?守ってやれてる?
それにしても、この本の作者の方は、実によく猫を観察しておられる。猫の視点で見た世界が、巧みに描かれている。そうか猫って実際はこんなこと考えたり喋ってたりしたんだーという気が、本当にしてくる。
物語中、チーちゃんが一生懸命鳴いて飼い主さんたちに何か訴えようとするシーンを見て、猫って口がきけないあたりも、いたいけでかわいそうな感じがする動物だと、ふと思う。
Posted by mik at 04:35 AM
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いしいしんじ『ポーの話』
「空は、でかい橋なのです。(中略)目に見えない場所へもつながっている。おれたちのいるところ、ポーに見えているより、よっぽど大きい。よっぽど深いです」。物語の随所に散りばめられた、深淵で示唆に富む台詞は、まるで『星の王子さま』のよう。さみしくて幸福な長編小説。
Posted by mik at 11:29 PM
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最近の読書
「ハチミツとクローバー」8巻と、池澤夏樹「キップをなくして」。
この3か月、猫にかまけてばかりいるために、めっぽう読書量が落ちてるし、観たい映画もたまっている。
Posted by mik at 11:48 PM
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『世にも美しい数学入門』
ものすごく面白い本を読んでしまった。読みながら、わくわくを通り越して、ぞくぞくしてしまったほどだ。
作家の小川洋子氏が、数学者・藤原正彦氏の著書にインスパイアされて、かの名作『博士の愛した数式』を著したというエピソードは、インタビュー記事で読んで知っていた。そのお二人の対談とあって、ぜひ読んでみたかったこの本。
小川氏いわく、藤原氏は「ユーモアにあふれるロマンティスト」なのだそうだけど、その藤原氏の口から語られる数学の世界観は、いかにもロマンチックだ。
数学が、この世界の真理をいかにシンプルかつ完璧に、美しく表現しているものなのか。本文中、数学は「芸術」であり、「文化」であり、また、人類の叡智の及びきらない(「神様の手帖に書かれた」)、崇高なものでさえあると語られる。
私は数学を、こんなふうに美的側面からとらえてみたことはなかった。
知的好奇心を刺激する1冊。雑学好きの人にお薦め。
Posted by mik at 03:24 AM
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いしいしんじ「白の鳥と黒の鳥」
いしいしんじ短篇集。少しシュールでグロテスクな筆致は、「ぶらんこ乗り」や「プラネタリウムのふたご」の、透明感ある作風と好対照。でも、作者特有の世界観は健在。
いしいしんじは、新刊が出たら必ず読みたい、私のお気に入りの作家の一人。
Posted by mik at 09:54 PM
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